≡ヴァニティケース≡


「ええ……。で、首尾は?」


「上々でした。全てはお嬢様の意のままに」


「そう、それにしても……」


 そう言いながらゆっくりと体を起こした。予定通りならば数日は眠っていた筈だ。おかげで少し関節は軋むが、とは言え気になるほどでもない。邪魔者が居なくなり伊藤家を牛耳れるのだ。それを思えば軋む体も霞む目も、喩えようもなく心地いい。


 改めて考えてみても、これほど上手くいくとは思っていなかった。どこかで躓くのではないかと、そんな危惧は常につきまとっていた。雇った者達は、そもそも報酬にのみ忠実な奴らだ。金が支払われる前に裏切ることはないだろう、と確証は無くても思い込むしかなかった。



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