つぶやき彼氏とつぶやき彼女。



「ふぁ…」



読んでいた本で、あくびをして開いた口を隠す市川くん。


暗い茶色の髪が、風に煽られ、フワッとなびく。


初夏の教室の窓側の席。



「ん……眠い」



さほどパッチリではない目。


そこから伸びるまつ毛は、あたしよりも長い。



「…はぁ、湊兎くんは気楽でいいね。」


「……何で?」


「クラスの中で、あたしみたいなやつが、パンピーと仲良くできないツラさを知らないでしょ?」

「…」


「休日はお出かけしないで、ひたすらパソコンとにらめっこのやつとか、ヲタクと思われてさ」



ヲタクと言うコトバが、どれほどを人を傷つけるか知ってる?


市川は知ってる?



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