桜ちる
初旅
「おはよう」

相沢からであった。

「前まで来てます」

昨日は七時に電話をするから
その時に落ち合う場所を決めると言われていた。
すでに用意は出来ていたが、櫻子は慌てた。
すでに相沢は住まいを知っていた。
何もかも調べ済みあろうか。

「おい、早いな」

信二がエレベーターに乗り込んで来た。

「前に来ているのよ。教えたの」

「まさか」

二人は顔を見合わせたが、互いに何を言うべきか迷った。

「男は狼だからな」

信二はそう言うと、一階の駐車場に続くドアから出て行った。
相沢は玄関の前で、車から出て待っていた。
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