桜ちる
桜咲く
相沢と櫻子は三度目の奈良を見て廻った。

信二がなかなか合わせることが出来ないので、
いつしか奈良の観光を二人ですることになった。
平城京に行くことにした。

「ここは来たの」

「遠足で来た事があるわ、それっきりよ。
 私たちは街道をめぐるサークルだから」

「それなのに付き会わせて悪いね」

そんな事を言いながら、二人は日曜日を楽しみにしていた。

相沢は妹の昌子の幼いときの話をした。
昌子は容易く人と打ち解けるタイプではないが、
君が気に入ったんだと言った。

櫻子は大学で知った昌子の話をした。
一目見ただけで考えることが同じだと思った。
珈琲を溢してハンカチを借りたとか、
他愛無い話だが、櫻子には大切なことであった。

それは相沢も同じ思いだと思っていた。






< 53 / 250 >

この作品をシェア

pagetop