ﾛ包 ﾛ孝 ２

「そうだよな。俺のお父さんは、俺達家族が大事だったんだよな。凄げぇ人だったよ」

　そう言うジェイの茶褐色の瞳は悲し気に揺れている。隣に寄り添い、肩を抱き締めるとカンは続けた。

「辛い事思い出させたな、勘弁しろ。でもボスも同じ思うよ？」

「そうなのか？　ボスは俺の事が必要じゃなくなったんじゃないのか？」

　悲しみと苛立ちに歪んだジェイの頬に手を添えて、優しく微笑み掛けるカン。

「失いたくないから危ない場所から遠ざけたいのよ、ジェイ。
　そしてカンも命の変人にお礼参りしなきゃいかんだろ？」

　ジェイはやっと身体を起こすと、にっこり微笑んで立ち上がった。

「よし、じゃぁ恩返しでもして貰うとするか！」

「任しといてよ！　遊技場に泊まってバコバコよ！」

　カンは得意気に胸を張って言う。ボディーガード達は肩を震わせ笑いを堪えていた。

「遊技場？　泊まってバコバコ？」

「？　ジェイ知らないの？　有名なおとぎ話。亀の頭を助ける話だろ？」

　カンは至って真面目な顔でジェイを見詰め返す。

「ハハハハッ！　亀を助けて竜宮城に玉手箱だろ？　どうして微妙にエロ方面に間違ってるんだ？」

「ダー、エロ暇太郎ね！」

「ブッ！　浦島太郎だって！ハハハハハハ」


〇※○※○※


　どうにか爆笑してしまうのを免れたボディーガード達をお供に、カンとジェイはドームイン東京を出発した。


　　シュゥィィィィイン



　それはジェイに取って実に久し振りとなるホバークラフトだった。その懐かしい独特の振動に身を委ねていると、過去の思い出が次々と沸き上がってくる。

　逞しく、いつもふざけていた父。小さな身体で一生懸命家事をこなしていた母。そして兄弟との思い出が……。

【お父さん、お母さん……お兄……】

　　グスッ

「どうしたジェイ。気分悪くなったか？」

「いや、な、何でもない。グスッ、でもカン。俺の事お爺ちゃんに何て言うつもりだよ」

　ジェイはその涙を覚られないように質問する。カンからは平然と答えが返って来た。