ロ包 ロ孝 2
「ボスッ! た、た、大変です!」

 雷児はティーの承諾も得ずに扉を開け放った。

『なんだ? 雷児、血相変えて。もう滅多な事では驚かんからな』

 ティーは爪を整えながら振り向きもせずに言う。雷児はティーの放つ【闘】に依ってもたらされる、激しい耳鳴りに襲われながらも続けた。

「痛たた……それが今度は本当に凄いんですよ! 驚いて声を出しても良いように、枕でも口に当てといて下さい」

『なんだ雷児ぃ、勿体付けるなよ……』

 やっと頭だけ振り返るとティーは言った。

「それが超素質と思われる彼なんですけど、何もかにもボスそっくりで逆に気持ち悪い位なんですが……」

『が?』

 焦れったそうに身をよじっている主を楽しむかのように、雷児は言葉を選ぶ。

「蠢声操躯法もやっていないのに若いんです。60位だって言ってましたけど、絶対二十歳(ハタチ)台、いや悪くても30にしか見えません」

『どういう事だろうな、それは』

 最初は話し半分で聞いていたティーも、その内容に興味を持ち始めたのか、雷児にコーヒーを薦める。

『まぁ座れ。急ごしらえだから、座り心地は保証出来ないがな』

 吹き飛ばしてしまった応接セットをなんとか修理させ、取り敢えず体裁を整えていたティーは、自分の分のコーラを注ぎながら座り直した。

「それだけじゃ無いんです。いいですか? ボスのあの『再生能力』迄持ち合わせてるんですよ」

『なんだって? これは超絶発声をした為に得られてしまった能力だぞ。そんな事象が、海鮮事変後に起こったなんて話は聞いた事がない!』

 気付くと雷児は頭を抱えて倒れていた。ティーは寝室から枕を抱えて戻って来ると、優しく【闘】で囁いた。

『雷児ぃ、おい雷児ぃ』

「つっ、痛たたた。……ボスと話すのは命懸けですよ。今度こそ頭が弾け飛んだかと思った!」

 よろよろと起き上がり、やっとの事でソファーにもたれ掛かった雷児はそう言った。

『いつも悪いなぁ、雷児。しかしそんな再生能力が開発されたって話も聞いた事がないし……』


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