ロ包 ロ孝 2
 騒ぎが収まって数分すると、黒いヘルメットに黒い皮のツナギを着込んだ数人が姿を現す。

 彼らは辺りを見回し、砂地のドーム内を静かに歩き始める。すると1人の酔っぱらいが彼らに近付き「この金持ちの太鼓持ちがっ!」と、手に下げていた酒瓶を投げつけた。

「ダッ」

  パリンッ

 ひと声で酒瓶を粉々にした彼が、それを投げる拍子に転げた酔っ払いに向かって屈み込むと言った。

「おじさぁん、そんなことしてると公務執行妨害になっちゃうよ?
 それに我々は平和と法を守ってるんだ。特権階級の擁護をしてる訳じゃない」

 そして彼は立ち上がり、周りに聞こえるよう一際大きな声で言い放つ。

「我々音力無くして、日本の平和は守られない!」

 その場の空気はビリビリと震え、人々は一様に耳を塞いだ。パラパラと力無い拍手と低いブーイングが聞こえたが、彼らは意に介さず巡回を続けている。

 個人の行動を政府が監視する為の生体ICチップだったが、今のように市民側からも使用されているのが現状だ。

 全人類の行動を管理・記憶しているアカシックレコーダーには、ハッキングを阻止する為のセキュリティプログラムが幾重にも施してあるので、侵入は困難を極める。

しかしチップそのものは容易に判読が可能な為、人々はこうやって音力エージェントの接近を知る事が出来たのだ。


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