ロ包 ロ孝 2
  ゴォォォォオッ

 そして一際強力な竜巻が起こった。手を翳(カザ)してその風を遮り、薄目を開けて縮こまっていた桜木は、尚も不敵にこう言った。

「こんな所で【前】を放ったら、それは大変な事になりますよ? クククッ」

「やかましい! 地獄に堕ちろ、ザァァァアッ」

  ガァァァァアアッ!

 龍が咆哮と共に、勢い良く飛び出した!

  ドガァァァァアアン

 天井は捲れ上がり、目前の部屋は廊下ごと吹き飛んだ。だが……。

  ァォォン ォォン ォン

 龍の叫びが消え、舞い上がっていた粉塵が収まっていく。

「【前】にしては威力が全く無かったぞ、どうなってるんだ」

 手応えがまるで無かった事に戸惑い、桜木達が居た筈の場所を窺うジェイだが、埃がまだ視界を邪魔している。

 しかし。

「!!」

「だから効かないって言ったでしょう。
 峰晴さんと違って、貴女は頭が悪い」

「何だと? この死に損ないがっ!」

「やれやれ、折角のスーツが台無しだ」

 静けさを取り戻したそこには、あたかも当然のように桜木達がいた。しかも身体の埃を払う余裕まで見せている。

「貴女に理解出来るかは疑問ですが説明しましょう。
 我々は、貴女の声と位相が逆の音をぶつけたんです。プラスにはマイナスを、マイナスにはプラスを当てれば則ちゼロになる。
 頭のいい峰晴さんなら、どういう事か解りますね? クゥックックッ」

「み、峰さん?」

 桜木の言った事が今ひとつ理解出来なかったジェイは、峰晴を振り返って助けを求めた。

「ああ、ジェイ。残念だが、奴の言う通りなら俺達の術は効かねぇ。奴は音波の特性を使ってやがるんだ」

 峰晴は大袈裟に肩を落として答える。

「クウゥックックックッ。やはり峰晴さんだ。物分かりがいい。
 さぁ、冥土の土産も出来ましたし、そろそろ逝って頂きましょうか」

 そう言い終わると桜木の部下がロケットランチャーを構える。

「だがな!」

 そう言うと峰晴は、桜木張りの不敵な笑顔を浮かべていた。


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