ロ包 ロ孝 2
 諦めて勘定を払おうとテーブルの周りを見てみたが、レジ端末が見当たらない。

 カンは手を振って店員を呼んだ。

「らっしゃい! おあいそシロ。黒ですか?」

 ジェイと話している時には曲がりなりにもスラスラと単語が出て来たが、ひとり取り残されたカンはまた緊張して、とんちんかんな日本語になってしまっている。

店員はニコニコしながら言う。

「ああ、ジェイさんはいいんです。お世話になっていますから。
 お客様もお代は結構ですよ?」

 勉強がサッパリのカンに敬語が解る筈もなく、目を白黒させながら聞き返した。

「おだいわ? ケコー?」

 パタパタと羽をばたつかせるジェスチャーをして問い返すカンに、店員はさも可笑しそうに説明した。

「ハハハ、お金は要らない、ということです。
 ジェイさんにはいつも揉め事の仲裁に入って貰ったり、ガラの悪い連中が屯(タムロ)さないように気配りをして頂いてるんですよ。
 でもジェイさんのあんな顔、初めて見ましたよ。楽しそうでしたね!」

「はい、カンも大変嬉しがりました。お有り難うござい!」


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