ロ包 ロ孝 2
「どうしたの? 三千年(ミチトシ)さん」

 この頃はまだ林の事をミッツィーとは呼んでいない。

「いやっ? 身体が……固まっちまったみたいで動かないんだ」

 野木村のヘッドランプに照らし出された林は、犬のような格好のまま、首と手先だけをわなわなと動かしながら言う。野木村は山路と大沢に問い掛けた。

「山路、大沢! あなた達はどうなの?」

「多分んん大丈夫だとぉ思いますぅ」「ななっ、なんとか」

「じゃあちょっと下がりなさい。後ろへ戻るのよ?」

 そう2人に言うと野木村は、かなりの勢いで後退を始めた。

「あぁっ! ちょっとぉ! 野木村さんのぉデッカイ尻が顔にぃっ」

 山路達がまごまごしている間に、野木村はギュウギュウと尻を押し付ける。

「デッカイ尻なんて失礼しちゃうわねっ」

  ンボフフッ!

 山路は一瞬何が起こったのか解らなかった。

 目の前が急に温かくなったかと思うと、息が出来なくなったのだ。

「ブハッ! くっ、くっせぇっ! こぉんな密室でそれは反則ですよぉぉっ!」

「あら山路。乙女に『尻がデッカイ』なんて言うのも反則なのよ?」

「ハッハハハ、目の前でヤられたらそりゃキツイや!」

 林は腹をかかえて笑っている。

「……どぉ? 三千年さん。行ける?」

 林の笑いが収まるのを見計らってそう聞いた。

「おっ? 動く。ほら動くよノギちゃん!」

 野木村は緊張でガチガチになっていた林の心をほぐし、笑いに依って血行を促して身体の硬直も解いたのだ。

 こうしてその後調査を終え、初の単独ミッションは無事成功を以て終了した。

 このように野木村はその『恋する乙女心』を存分に発揮する事に依って、林のメンタル面はおろか、様々な場面で細部に渡り完璧にサポートをこなすのだ。


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