揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
何か言いたげな顔で、彼はこっちを見ていた。

手で覆っていた私の顔を、じっと見据えてくる。


「な、何で開けるのっ!?」


我に返り、私は咄嗟に胸と下を手で覆い隠した。

でも手で隠せる範囲なんて、たかが知れている。


痣を全て隠す事はできない……。


だけど彼は、服を着たまま浴室に足を踏み入れて来て。


近付こうとしてくる彼から離れようと。

出しっぱなしのシャワーをそのままに、私は一歩ずつ後ろに下がって行った。


「何で…泣いてるの?」


「えっ?泣いて…ないよ」


泣き声を聞かれてしまっていたようで、慌てて私は誤魔化した。

泣いている理由なんて…言えるはずがない。


「俺の…せい?」


「ち、違うよっ」


「じゃあ、何で泣いてるの?遅れて来た事と関係あるの?」


関係、大アリだよ。


だけど、言えるわけがない。


「何にも…ないよ」


目を合わせづらくて、思わず逸らしてしまった。


これじゃあ“関係ある”って言ってるようなもんだって、分かってるけど。

否定するしかないじゃない。


けれど、彼はこんなんじゃ納得してくれなくて。


「俺の事、信用できない?」


「違う…の」


どう答えれば、これ以上問いただして来ないのだろうか?

ホントに、困っていた。


だけど、彼はそんな私をいきなり抱きしめてきて。
< 217 / 298 >

この作品をシェア

pagetop