揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「おーい、先生が日直呼んでたぞー」


教室の入口付近で、学級委員の市川君が大きな声で言っている。

そういえば、今日の日直は私と諒斗だ。


最悪……。


こんな時に、2人で何かしなくちゃいけないなんて。


「おぉっ、分かった」


そう言うと、諒斗は1人でさっさと教室を出て行ってしまった。


「あんたも日直でしょ?」


何で行かないの?

そんな感じで、沙希は私を見てくる。


「……行ってくるね」


本当は心の底から行きたくないけれど、ここで行かないと変に思われるし。

沙希に理由を話すには、あまりにも時間が足りなさすぎる。


とりあえず、諒斗とは距離をおこう。


そう思いながら教室を出ると。

隣のクラスの前で、諒斗が壁にもたれて立っていた。


私を…待っていたらしい。


「別々で行ったって、意味ねぇだろ?」


その言い方は、いつもの諒斗で。

だけど、私を見るアイツの目が…怖く感じる。


また襲われるんじゃないかと、自然と身構えてしまう。


「ほら、行くぞ」


そう言って、諒斗は私の少し前を歩き出した。

目の前にあるこの背中は、中学の時から見慣れているもの。


なのに…今は、すごく怖い。

まるで、知らない誰かの背中のように思えてくる。


この体に…私は昨日、犯されてしまったんだ。
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