揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「ほら、克也がグローブ忘れた日」


ふぅーーーーーっ。

その日ね?その事なのねっ?


覗きの方じゃなくて、心底ほっとした。


「あぁ、うん。お母さんに頼まれて。でも、野球部がグローブ忘れるってひどくない?」


厭味のように、克也を横目で見る。

その視線の向こうには、笑顔の大翔君。


あんなかわいい顔して笑うんだ……。


ちょっと、意外だった。


でも、これはやばいよ。

絶対、水沢以外にもモテるはず。


クールな素顔と可愛い笑顔のギャップに、女子もクラクラッ!


って、何言ってんだか私。


「何だよ、うるさいなぁ。姉ちゃん、もぉ行っていいからっ」


ばつが悪いのか、克也はそう言って私をドアの方に押してきた。


「何よ、もぉ」


もう少し大翔君のそばにいたいのにっ。


「はい、ありがとありがと。じゃあねっ」


部屋の外まで押し出された私の後ろで、無情にもドアの閉まる音がした。


克也のバカっっ!

人の恋路の邪魔する奴は、馬に蹴られて死んでしまえっ!!


心の中で、虚しくそう叫び倒した。
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