揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
思わず、ドキッとしてしまった。


でも、それが何に対しての『ドキッ』なのかよく分からなくて。

にやけ顔を見られた事なのか、あの子に対してなのか。


ユニフォームもよく似合っていて、ちょっと大人っぽい顔をしてる彼。

まぁ、カッコイイとは思うけど。


でも、相手は小学生だよ?

弟と同い年の。


あり得ないっての。


「姉ちゃーん」


ランニングが終わり、克也が私の所に走って来た。


「ほら、野球部がグローブ忘れてどうするの?」


「サンキュー」


渡したグローブを、早速左手にはめる克。

こうやって見ると、いつもは情けない弟がちゃんと野球少年に見えるから不思議だ。


「あのさっ、克」


みんなの所に戻ろうとしたアイツを、私は慌てて呼び止めた。


「えっ、何?」


ピタッと立ち止まると、慌てて戻って来る。


「あの子、何ていう名前?」


小声でそう尋ね、こっそりとさっきの子を指差す。

ちょうど給水タイムのようで、こっちに背を向けて水筒のお茶かなんかを飲んでいる。


「え?どれ?」


何人もかたまっているから、確かに分からないかもしれない。


「ほらっ、さっきあんたを肘でつついてくれた子。隣で走ってた」


「あぁ、大翔(ひろと)?」


『大翔』って名前を聞いただけなのに、何故だかドキドキしてしまった。


なんか…見境なくなってない?私。

小学生相手にときめいてどうすんのよっ。
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