揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
そして、俺は。

いつもは気にならない梨香の存在が、やけに疎ましく感じられていた。


絡められた腕も、持たれかけてくるその頭も。

そして、わざと俺の耳元で話す声も。


「大翔、珍しく起きてるじゃん」


耳元で、そう囁かれた。

珍しいって言われるぐらい、俺っていつも寝てるんだろうか?


ふと画面を見ると、ちょうど主人公達のキスシーン。

高校生のカップルだけど、結構激しいキスをしている。


そのうち、梨香の指が俺の手に絡んできた。

俺の腕をさりげなく自分の胸に当てている。


「……誘ってんの?」


そうとしか思えない行動。

呆れたように言ったのに、


「そう、誘ってるの」


と言って、梨香は俺の唇にキスをしてきた。


初めは、軽いキス。

そして、だんだんと激しく舌を絡めてくる。


流されてしまいそうになる気持ちを抑えて、俺は梨香から顔を離した。


由佳さんがすぐ目の前にいるのに、こんな姿は見せられない。

何事もなかったかのように、俺は視線をスクリーンに戻した。


その時、ふと諒斗って奴と目が合った。

何か言いたげに、俺の方を見ている。


その視線は、俺の心の奥に隠した本音を見透かしているようで。


目を逸らしたのは…俺の方だった。
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