この歌声を捧ぐ・・・

はじまりの

この日私は打ち合わせという名目で事務所に来ていた。

「もうすぐデビューする新人歌手、高橋椎奈」それが私。
デビューに向けての打ち合わせ。いつも通りの打ち合わせのはずだった。


「ごめんね、待たせて。ちょっと色々ゴタついてて・・・。」
部屋の扉が開き、入ってきたのはマネージャーだった。

「いえ、大丈夫です。」
そう言って読みかけの小説を鞄にしまい、椅子に座りなおした。

「今日は大事な話があるんだ。
あの・・・すごく言いにくい事なんだけど・・・。」

「なんですか?早く言ってください。ハッキリしないのって嫌いなんですけど。」

「デビューの事なんだけど・・・。」

「あぁ、はい。4月でしたよね?」

「いや、それが9月になって・・・。」

「5か月先延ばしになったんですね、分かりました。」

「それで・・・ソロじゃなくてグループでデビューすることになったんだ。」

「・・・はぁ!?何で!!?」

「い、いや・・・僕も反対したんだよ?
キミとは1年以上の付き合いだし、キミの性格も理解してるつもりだから・・・。
でも上の命令なんだ。明日は初顔合わせだからよろしくね!!」

「ちょっと!何逃げ・・・!」



広い部屋に虚しく響く私の声。
残ったのは私がグループデビューするという事実だけ。


この事実が


私の人生を変えた。


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