トマトときゅうり


 エレベーターを出たところで、青山さんにばったり会った。

「楠本さん、お帰りなさい」

「おう、青山。外出か?」

 軽く手をあげて、きゅうりが応える。

「はい、地域周り行ってきます。――――瀬川さん、ちょっといいかな」

「え?・・・はい」

 話している二人の横を頭を下げてすり抜けようとしていたら、青山さんに呼び止められた。

 きゅうりは青山さんと私をちらりとみたけど、何も言わずに営業部へ入っていった。


 給湯室へ行く廊下まで歩いていって、青山さんは私を見た。

「玉砕覚悟で聞くけど、今日予定ある?」

 真剣な目とぶつかって、慌てて視線をそらした。

 ・・・ぶっちゃけ、全くの暇人の私。

 でも。

 でも。

 好意を寄せてくれている、青山さんと過ごすのは・・・どうよ。

「・・・すみません。女子会があるんです・・」

 実際申し訳なく思ったから、申し訳なさそうな顔で言うことが出来た。

「女子会?」

「女の子だけで集まって、ご飯するんです。あまり断ると誘いがなくなるんで、今日は・・・ごめんなさい」


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