トマトときゅうり


「トマト?」

 きゅうりの声が聞こえる。

 私はそろそろと顔を上げた。

「・・・・・ビックリ、しました」

 声を何とか振り絞る。

 その返事に口角をあげたきゅうりはスプーンを私に差し出した。

「嫌ではなかった、と。ほら、もうしないから、食べてしまえよ。おつかいなんだったら、5時には戻らないと」

「あ!」

 そうだ、忘れてた!

 私はあくまで仲間さんのおつかいで外出してるんだった。


 まだほてった頭と身体のまま、結局よく味わえずに急いでアイスを食べた。


 きゅうりに舐められた指先がじんじんする。

 もう何でもないのに、終わったのに。会社に戻って顔の赤みが消えても、人差し指だけは熱をもっていた。



 それは私を動揺させた。





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