あやまち
「あたしは、遊びの中の一人でいいなんて、そんなことは思えないから」


「は?」


「でも、麻希と付き合い始めてからはそういうのをやめたんでしょ?だから、麻希のことは本気なんだと思ってた」


「ちょっと待て!」


「え?」




切羽詰まったような渉の声が聞こえてきたと思ったら……



少し空いていた渉との距離が、いつのまにか縮んでいて……



見上げた先の渉は、怖いくらいに真剣な表情をしていた。




「ど、どうしたの?」


「遊ぶってなんだよ?」


「え?渉、いろんな女の子と遊んでたんでしょ?」


「は?誰がそんなこと言ったんだよっ!」




そう叫んだ渉の声は、今だかつて聞いたことのないような、低いけれど、大きなもので。



あたしの心臓は、ドクドクと痛いくらいに動き始めた。
< 82 / 220 >

この作品をシェア

pagetop