《短編》空を泳ぐ魚
「…何かちょっとヤバいことになってるな、セナちゃん♪」


「うっさいよ、アホ教師。」


ニシシッと笑って小声で言う俺に、

清水は疲れたように椅子に腰を下して長机に突っ伏した。



「…あんま無茶すんなっつーの。
俺の偉大さに感謝しろよ。」


清水からの言葉は、返ってこない。


いつもの疲れた顔とはまるで違う程に、泣きそうな顔で視線を流す。


そんな顔が、ちょっと可愛いとか思ってしまうんだけど。



「…つーか、教室でのアレ。
すっげぇ焦ったじゃねぇかよ。」



“大方、生徒のことエロい目で見てんじゃないの?”


図星なんだから、めちゃめちゃキョドるし。



「…そんなに俺とどっか行きたかった?」


「…別に、アンタじゃなくても良いけど。
遠いとこ連れてって欲しかった。」



本当に彼女は、俺のことを未だに何とも思ってないらしい。


強がってるだけなら良いけど、そうじゃないっぽいし。



「…ねぇ。
あたしって、退学になったりとかするの?」


呟くように清水は、俺に問い掛けた。



「…まぁ、俺が何とかしてやるから。
とりあえず今日、何時になっても良いから俺の家来いよ。」


コクリと頷いた清水に俺は、とりあえずは安堵のため息を吐き出した。



「…今ちょっと、初めてアンタのこと頼りにしてるかもー…」


諦めたようにそう呟いた清水は、力なく笑って。


こーゆーしがらみが、本当に似つかわしくない女だと思った。


可哀想にこんな場所じゃ、見てるこっちまで閉塞感で息苦しくなってしまう。



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