他に手段(とりえ)がなかったから
そう思っていた龍太郎に。

「ほらっ」

雛菊は、ある高校のパンフレットを見せる。

『天神学園高等部』

聞かない名前だ。

「ちょっと家から通うのは遠いから、寮生活になるけどさ。ここなら龍太郎が好きな空手や格闘技も思う存分させてくれるみたいだよ?理事長さんや教頭先生が話の分かる人でさ、どんな生徒でも才能のある子なら受け入れてくれるんだって!」

「俺に何の才能があるってんだよ…」

兄貴に追いつけない俺に、何の才能が…。

水道から水を注いで飲み干した後、そんな言葉を反芻し、苛立ちにグラスを床に叩きつけようとして。

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