龍とわたしと裏庭で①【加筆改訂版】
「何だって!?」

圭吾さんはギョッとしたように顔を上げた。

「志鶴! 簡単にそんな事言うんじゃない。竜城の龍神はお伽話ではないんだ。連れて行かれるぞ」


「夢の中だったんだもの」

わたしはブツブツと言い訳をした。


「ああ、もういい。朝になったら僕が自分で言い訳に行く。花嫁人形を奉納して許してもらおう」


ゴメンね

わたし、手間ばかりかけさせてるみたい。


「あのね、圭吾さんに似てた」


「先祖だからね。その逃げた花嫁の産んだ龍神の子供が羽竜の始祖だって言われている」

それから笑い出しそうな声で

「泣き落としに弱いとは思わなかった」って言った。


「おいで。もう入ろう。草で足が濡れたんじゃないのか? 風邪引くぞ」


圭吾さんの方こそ裸足のくせに。


わたしはもう一度月明かりの庭を振り返った。


「本当にみんなどこかへ行ってしまったのね」


「二日もすれば戻って来るよ。君を置いて行ったりしないから安心して」

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