【完】 After Love~恋のおとしまえ~
サトシの部屋に初めて招かれたのは、穏やかに晴れわたる土曜日のこと。
夏を待ちわびるように木々が葉を伸ばし、街ゆく人々の服装に半袖が目立ちはじめたころのことだった。
手土産のパウンドケーキは、前夜に私が焼いたもので。
可愛い包装紙とリボンでめかしこんだそれは、両手で抱えた紙袋の中で出番を待っている。
私の家からサトシのマンションまでは一時間半はかかるけれど、その道のりは全く苦にならなかった。
車窓を流れる景色さえ、少しずつサトシの元へ近づいているのだと実感できて、私の気分を高揚させた。
そうしてたどり着いた、サトシのマンションの最寄り駅。
駅に着いて電話をかけると
「今から迎えに行くよ」
携帯から響く弾んだサトシの声が、私の胸をますます高鳴らせた。