【完】 After Love~恋のおとしまえ~

「そんなわけないだろっ!」

とぼけるサトシを、冷静に問い詰める。

「もう嘘をつかないで、本当のことを言ってよ」

「嘘なんかついてないよ!」

「……」

しばしの沈黙の時間の後、サトシが口を開いた。

「嘘なんかついてないけど……もし俺が、万が一嘘をついていたとしても、それは仕方がないことかもしれない」

は? 

「仕方ないって何なの?」

「だって……」

一呼吸おいてから、サトシは、史上稀に見るありえな言い訳を口にしたのだった。

「人間というものは、精神構造上、適度な間隔で嘘をつくようにできているんだよ」

はぁ?

「これは医学的に証明されていることなんだけど、人間は無意識のうちに、適度な間隔で嘘をつくように、脳のメカニズムができているんだ。そうしてガス抜きをしないと精神バランスが崩れて、メンタルの病気になってしまうんだ。大事なんだよ、ガス抜きは」

……なに言ってるの?

「だから、俺は嘘をついてなんかないけど、万が一俺が嘘をつくことがあっても、それは医学的に仕方のないことなんだ」

「……」
< 246 / 595 >

この作品をシェア

pagetop