【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「そんなわけないだろっ!」
とぼけるサトシを、冷静に問い詰める。
「もう嘘をつかないで、本当のことを言ってよ」
「嘘なんかついてないよ!」
「……」
しばしの沈黙の時間の後、サトシが口を開いた。
「嘘なんかついてないけど……もし俺が、万が一嘘をついていたとしても、それは仕方がないことかもしれない」
は?
「仕方ないって何なの?」
「だって……」
一呼吸おいてから、サトシは、史上稀に見るありえな言い訳を口にしたのだった。
「人間というものは、精神構造上、適度な間隔で嘘をつくようにできているんだよ」
はぁ?
「これは医学的に証明されていることなんだけど、人間は無意識のうちに、適度な間隔で嘘をつくように、脳のメカニズムができているんだ。そうしてガス抜きをしないと精神バランスが崩れて、メンタルの病気になってしまうんだ。大事なんだよ、ガス抜きは」
……なに言ってるの?
「だから、俺は嘘をついてなんかないけど、万が一俺が嘘をつくことがあっても、それは医学的に仕方のないことなんだ」
「……」