【完】 After Love~恋のおとしまえ~
仕事が長引いているのだろうか。
それなら仕方がないけれど……
「どうしようかなぁ、これ」
ビニール袋の中のアイスクリームを目の高さに掲げ、小さなため息をつく。
迷っていても溶けていく一方なので、マンションの外へ出て近くの公園に向かうと、誰もいないその小さな公園のブランコに腰をかけた。
袋から取り出したアイスクリームのふたを開け、ひとすくい口に入れる。
濃厚なミルク味は夏の夜には甘ったるすぎたかもしれないと後悔しながら、この公園で待っているとサトシにメールをして、空を見上げた。
「今日、花火見られるのかなぁ」
もしも急患や患者さんの容態の急変でもあったなら、帰ってくることは当分不可能だろう。
医師の仕事はそういうものだと理解しつつも、湿気を含んだ重い空気が、私の気分まで重くした。