【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「友里は、『MRSA』って知ってる?」
「え?」
おもむろにサトシの口から出てきたのは、聞きなれない言葉だった。
「知らない、何それ?」
「MRSAは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌っていう菌のこと。抗生物質が効かない菌なんだ。あるとき、うちの病院で、そのMRSAの院内感染が発生した。それで、俺の担当患者さんが感染してしまってね。あ、『院内感染』っていうのは、病院内で患者さんに感染してしまうことなんだけど」
「うん、分かるよ」
「それで、その院内感染の原因が追及されたんだけど……」
サトシは、辛そうに顔を歪めた。
「最終的に、俺が原因だったってことにされてしまった」
「え?」
「俺の手洗いが不十分だったことが原因ってことにされた」
「……」
「絶対にそんなことないのに! 他に原因があるはずなのに!」
サトシが拳を握り、唇を噛む。