【完】 After Love~恋のおとしまえ~

何にしようか、と谷本先生がメニューを渡してきたので、私は慌てて、待っている間に読んでいた本を閉じてバッグにしまおうとしたのだけど……

「ちょっと友里ちゃん、なにその本?」

見せて、と谷本先生が私の本に手を伸ばしてきた。

「あ……どうぞ」

本を受け取ると、谷本先生は

「友里ちゃん、こんな本読んでるの!?」

パラパラとめくりながら、驚いた声を上げた。

驚かれるのも、当然かもしれない。

なぜなら私が読んでいたその本は――

「『天体の回転運動理論と軌道の力学』……って、すげー難しそうなんだけど」

「難しいですよー。二回通して読んでも、全然理解できませんでした」

苦笑しながら、谷本先生から本を返してもらう。

「これ、サトシが貸してくれた本なんです」


初めて会ったあのパーティーで宇宙の話をしてくれたサトシは、それからも私に、ことあるごとに宇宙の話をしてくれた。

また、おすすめだと言って、本を貸してくれたりもした。

けれどもそれらの本は、私にはとても難しい内容で、何度読んでも、理解するのが困難で……


「女の子にこんな小難しい本を貸すなんてなぁ。友里ちゃん、あいつの趣味を押し付けられて迷惑なんじゃない? 無理に読まないで、読んだふりして返しちゃえばいいのに」

谷本先生はいたずらっぽい顔をして、そんな提案をしてきたけれど。

私は、小さく笑って首を振った。


だって……

サトシの好きな世界を、私も知りたくて。

サトシの好きな世界を、私も理解したいから……
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