【完】 After Love~恋のおとしまえ~


車に乗り込みエンジンをかけると、ピアノ曲が流れはじめた。

「これって、ショパンの曲だろ? 俺さぁ、ショパンの名前はもちろん昔から知ってたけど、初めてアルファベットでCHOPINの名前を目にしたときは、てっきり『チョピン』って書いてあるのかと思ったよ。どう考えてもチョピンとしか読めないよなぁ」

「ショパンは、フランス語の読み方だからね」

「そうなんだ。そういえばこの前さ――」

あえてどうでもいい話題を振ってくるサトシに合わせてしばらく他愛もない話をしていたけれど、ふと会話が途切れた瞬間に、私の意識はさきほどの小倉家での出来事に飛んでしまう。

「友里?」

「あ、ごめん。なんか、ふいにさっきのことを思いだしちゃって」

「……会話内容はだいたい聞こえてたよ。強烈なオバさんだったよなぁ」

まったくだ。

とにかく、なにがショックかって、あんな人たちと彼が関わっていたことがショックだった。

娘もかなり変だけど、母親も相当おかしな人。
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