とある僧侶と不遜な僧侶
まずはじめにプロローグと行きましょう。
おはようございます。
初めまして、弥夜と申します。プロローグということで、恥ずかしながら出張らせていただきました。
 
 私が暮らしているこの「阿弥陀寺院」は、そちらの世界で言う……東京ドームという建物と同じ面積の敷地に堂々と建つ、とても立派な寺院です。
 この「阿弥陀寺院」のモットーは「健全な精神は健全な肉体に宿る」です。その為、この寺の僧侶たちは僧侶でありながら槍を持ち、日々鍛錬にいそしんでいるのです。
 かくゆうこの私も、今日も鶏の目が覚めないうちから中庭で1人鍛錬に勤しんでおります。
 
 私の容姿はどんな? ですか?
 私は自分の容姿を語るのはあまり好きではありません。
 いたって普通の、僧侶です。髪はつるつるに剃っておりますし、目は薄緑、顔は普通です。
 まあ……周りの者からはやれ「童顔」だ。やれ「髪が長ければ完璧女」などと揶揄されることもしばしばありますが、そんなことは全然気にしておりません。

ええ、全然です!!

 そんなことより、立派な僧侶になるために鍛練に励まなくては!!

 私がそう気合いを入れて槍を握った時です。
「~~~~~♪」
 ……鼻歌?
 どこからか鼻歌が聞こえてきました。
 あたりを見回すと、この中庭を囲むように存在する渡り廊下に人影が見えた。
 どうやら渡り廊下を、誰かが歩いているようです。
「誰です? こんな時間に」
 夜明け前から鍛錬している者は、私くらいしかいないはず……。もしや泥棒!?
 私は慌てて渡り廊下を目隠ししている壁を、背伸びをして覗き込んだ。
 するとそこから現れたのは……真っ赤な燃えるような髪、上機嫌な少し低い声……そして……。
 
 私は「それ」を見た瞬間、怒りに駆られ、その真っ赤な頭の人物を蹴り倒したい衝動に駆られた。

「弥昼~!!!!」

 私はその人物の汚らわしい名を叫びながら、全速力でその人物、弥昼のもとへ駆けて行く。
 呼ばれた弥昼は振り向き、私はその小憎たらしい顔面に蹴りを入れた。
 弥昼は軽々と吹き飛び、渡り廊下をごろごろと転がって行く。

「痛ってえ~!! 何すんだよ!?」

 状況の把握ができていない弥昼は右頬を抑えながら吠えた。そして私の顔を見て小さく「……ゲッ!」と漏らす。

「ここを、どこだと思ってるんです!?」

「阿弥陀寺院」

「じゃ、そこに座り込んでるのは誰です!?」
 
 私は、怒りの原因になった人物を指さす。
 すると、弥昼はのうのうと答えた。

「女」






 



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