ヘヴンリーブルー
1.始まりの朝
「おまえ達には本当に申し訳ないと思っている。だがしかし、事態は思ったより深刻だ。このオルドア大国を私の代で失うことは何よりも苦しい。しかし、かといってリブレフォール大国に吸収されるようなことだけはあってはならぬ。あのような独裁国に身を投じたら最後、我々もオルドアの民衆も瓦礫の上を彷徨うこととなる」

 オルドアの国王は深刻な表情を見せ、そう語った。

「だからお父様、一体何が言いたいのかしら?」

 三人姉妹の長女、セラフィが先を急かす。それは次女ウィセと三女フィスの気持ちをも代弁していた。

「おまえ達はディストランド大国という国を知っているかね?」

 その問い掛けに三人は一斉に首を横に振った。国王は三人のその姿に深く息をついた後、時々言葉を詰まらせながら次を続けた。

「今のリブレフォールに対抗するには、手段はただ一つ。我がオルドアとディストランドが手を取り合い、統合し、新大国を作ることだ。そしてその結びつきをより強くするため、ディストランドの王子と、オルドアの姫…つまり、おまえ達のうちの誰か一人が、結婚の儀を行うこととなった」

 娘達は初めて聞く話に顔を見合わせている。

「私はおまえ達三人を今まで自由に育ててきたつもりだ。そしてこれからも同じようにしていきたかった。しかし、このままではそうも言っていられない。私は国王として、この話を進めようと思っている。おまえ達も国王の娘として、この国の未来を背負う者として、どうか理解をして欲しい」

 国王はそれだけを伝え席を後にした。声をかけようにもそうはできない強い意志が、その背中から伝わる。

 国王が…父が、このような決断を下すとは。父は本気なのだ。

 それが娘達の正直な気持ちだった。

 国王の娘だとはいえ本当に自由に自分達を育ててきてくれた父が、今窮地に立たされている。今自分たちの国、オルドアが緊迫した状況にあるということはすぐに理解できた。
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