あかいさくら
いない
 それ以来、私は時間があれば毎日その公園へ足を運んだ。

もう一度会って、二人が無事であることを確認しなければ安心出来そうも無かった。

何日経っても見付からず、仕方なく、頻繁に公園で見かける小さな子どものお母さんに聞いてみることにした。

「最近、五歳位の男の子と女の子の双子を見てませんか?  ゆー君とちぃちゃんっていうんですけど」

「知らないわ、そんな子。この辺に住んでないと思うけど」

 曖昧な私の説明に、訝しげな顔をしつつも答えてくれた。
 見ていないどころか、知らないってどういうことなのだろうか。この公園の近くに住んでいると言っていたから、何度か会っていてもおかしくはない筈なのに、謎は深まるばかりだ。

 この日も結局見つけることが出来なくて、いっそ警察に届けに行った方がいいのかもしれないと思った。けれど、二人の本名も家も知らない私が何を言ったとしても、相手にされないのが関の山だろう。それでも明日探して見付からなかったら警察へ行こうと決めた。

 次の日、ずっと暇だから午前中から公園に行った。日差しも暖かいから、本とお弁当を用意して暗くなるまでいる算段だった。ずっといれば今日こそ会うことが出来るだろうとも思ったのだ。今日は平日にも拘らずいつもより人がいた。いつもより温かいからだろうか。

 それでも、花より団子といった感じの花見をする人がいないのは、まだ桜が咲き始めで三分咲きといったところのせいかもしれない。お昼になると人は公園からいなくなって、私だけになってしまった。折角だからと桜の木の下にあるベンチでお弁当を黙々と食べる。

「梅のおねえちゃーん、久しぶり!」

「こんにちはー」

 突然後ろから声が掛かって、振り返ると二人がいた。何で気付けなかったのかが不思議だったけれど、そんなことよりも やっぱり無事であったことに安心した。

「ちぃもね、ご飯食べる」

「持ってきたの?」

「そうだよー、ゆー作ったの」

 ゆー君は誇らしげにそう言うと、手に持っていた戦隊もののお弁当袋の中身を見せてくれた。ふりかけが混ぜてあるご飯の丸い形のおにぎりがラップに包まれて入っていた。

「上手だね」

「ちぃがしゃけ味で、ゆーがおかかなんだよー」

「おわんで、コロコロさせたの」

「めぐちゃんが教えてくれたー」

「めぐちゃんって誰?」

「テレビのお料理上手なおねえちゃん」

「ひとりでクッキングの人だよー」

 そういえば昔、その教育番組には私もお世話になったなあと思い出した。そのときは確か、かれんちゃんだった気がする。懐かしい。そう思いながら二人もおにぎりを食べ始めたので、私もお弁当を食べた。
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