寂しがりやの猫
「もしもし?田村?!」


『はい!田村です。すいません、怒っていいです。デートの邪魔してしまいました!ごめんなさい!』


先に謝られて 拍子抜けする。

全く コイツには 敵わない。 なんで 私の気持ちをいつも先回りするわけ?

「ほんとに いい加減にしてよね。もう 私 後が無いの。これ以上歳取ったら誰も誘ってくれなくなるし、本気で一生ひとりぼっちになっちゃうじゃない!」

思わず本音が出てしまった。

すると田村は 何故か落ち着いた声でポツリと言った。


『中河原さんが、本気で結婚したくなった時に 本当にひとりぼっちだったら、俺が貰ってあげますよ』


「……」


カァ… と顔が熱くなる。

何言ってんのよ! って いつものように言い返せばいい…

なのに何故か涙が込み上げてきて 言葉にならなかった。

「…ばか…」


小さな声で言って 電話を切った。


嬉しいのか 悲しいのか 情けないのか よく判らない。

ただ、田村のことを本気で好きになってしまったことは確かだった。
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