夢想・連想・妄想
友だちの木
桜の花を見ると
一枚の写真を思い出します
桜の木の中ほどの一本の枝が
幹から折れています
枝は辛うじてつながっています

桜の木には花が咲いています
折れて地面についた枝先にも
花がしっかり咲いています
ダムに沈む故郷の徳山村を撮り続けた
増山たづ子さんの写真集の一枚です

写真集でもう一枚印象に残った写真と
言葉がありました
それは・・・友だちの木
川原に佇む一本の古木
その木を増山たづ子さんはそう呼んでいたのです

いろいろつらいことがあった時
増山さんは友だちの木に話したそうです
ご主人は先の戦争に出征して戻らなかったのです
友だちの木が増山さんにとっては
唯一の相談相手だったのでしょう

友だちの木は
増山さんが徳山村を離れてから
枯れて倒れたそうです
増山たづ子さんは2006年
3月7日に永眠されました



写真集「故郷 ~私の徳山村写真日記」
(株式会社じゃこめてい出版 1983年)
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/TPage/TP1130Masuyama1.html
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