【短】半透明な愛を捧ぐ
夜明けの名前

『───…つ、りつ』


誰かが、知らない名前を呼んでいる。


『りつ、俺の命が尽きるまで忘れはしない』


そう囁いてる彼の姿は、白い影に覆われていて分からない。

…ただ、分かるのは、心地いい低い声だけ。


「あたしはりつじゃない」


そう答えた。そしたら、いつもみたいに目が覚めた。

気怠い体をゆっくり起こして、そして自分の頬に涙の跡があることに気がついた。


これは、初めてだ。いつもはひたすら名前を呼ぶだけだったのに。

それにしても、あの会話あたしも誰かに言われた気がする。

ああ、ダメだ。全然思い出せない。



「里依南(リイナ)、昨日は眠れた?」


控えめにドアを叩く音が聞こえた後、そう聞かれた。

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