不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。

食堂に入ると、「佐倉君〜!」と理来を呼ぶ声が聞こえた。数人の女子と男子が理来に手を振っている。


「今からご飯?」

「うん。」

「ここあいてるし、一緒に食べよーぜ!」

でも、と理来は私に視線をうつした。クラスメイトからの誘いを断るのは良くないと思った私は「行ってきたら?」と言う。

「俺はお前と「佐倉〜!早く!」

「私は大丈夫だから!」

理来の背中を押せば彼は少しムッとしたような表情で「あーはいはい行きますよ」と投げやりな言葉をのべた。

一人になった私はAセットを注文して受け取り、あいている適当な席に座る。

他のテーブルは混んでいるのに私のところは私以外誰もいなかった。


食堂に人が増えて騒がしくなってきた時、前の席に誰かが座る。

ちら、と視線を向ければ乃木君がもくもくとBセットを食べている姿が目に入る。


「うわ、やっぱりあの二人付き合ってるんじゃね?」

「よく付き合えるよなぁ」

「乃木東矢は顔はいいけど性格無理!」

話し声が聞こえて、私は居心地が悪くなる。好き勝手言っている生徒達に怒りが込み上げてきた。


「川村さんかわいそ〜」

「乃木東矢が惚れてないなら避けないのに」


「…」

その言葉を聞いた瞬間、乃木君は突然立ち上がり、まだ半分以上残っているBセットを持った。

彼は今の言葉を気にして食器の返却口へ向かうつもりなのだろう。

そう察した時、私は無意識に彼を呼び止めていた。

「乃木君。」

彼は振り向き、無表情で私を見つめる。

「い、一緒に食べない?」

彼は一瞬面食らったような表情をしたあと、「変なヤツ」と小さく呟いた。

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