不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
___理来サイド
時間だけが経過していく。俺は心のベッドに横になっていた。しかし落ち着かない。女子特有の甘い匂いがして、ここは自分の部屋じゃないんだと改めて実感した。
違う意味で眠れなそうだと思った俺は携帯を開き時間を確認する。
(1時か…)
そろそろ寝ようと考えて目を綴じた時だった。キーという耳鳴りが響き、室内の空気が変わった気がした。どくん、と心臓が鳴る。体の上に重みを感じて俺は目を見開いた。
「っ〜!」
目の前には髪の長い女。肌は青白く、薄気味悪い。女は俺に顔を近づけてきた。どうにかしようとしても金縛りにあったかのように体が動かない。
「っ、」
女の唇が首筋に触れ、ちゅう、と吸われた。寒気が全身をおおう。刹那、金縛りが解けた。女の霊は壁をすり抜けて俺の部屋へと向かう。
俺は飛び起きて心の部屋を出た。
「心!」
「りりりりりく!今そこに幽霊が!」
「俺のとこにもでた!このアパートやばいだろ!」
「どうすんだよ」と続けようとした時、心の背後にあの女の霊が現れた。俺は咄嗟に心の手をひいて部屋を出る。
「…あの霊、どうしよう。」
とてもじゃないが俺と心の部屋で眠る気にはならない。友達の部屋に泊まりに行こうとも思ったが1時を過ぎている。寝ているに違いない。
俺は乃木東矢の部屋に視線をうつした。断られるに決まっているが、イチかバチか聞いてみようと思う。
「…今日は乃木の部屋に泊めてもらおうぜ。」
「え!?絶対無理でしょ!」
「無理だろうけど、聞いてみる価値はあるだろ。」
ドアの穴はガムテープで塞いだらしく、中の様子はわからなかった。
コンコン、
軽くノックをしたが、反応が無い。