恋する24時

「お早うございます、貴宝の五十嵐と申します、営業2課の長谷川さんと10時に約束しているのですが」





 我がNu社の朝は

 とても忙しい。





「おはようございます、ただいま長谷川をお呼び致しますので、こちらの席でお待ち下さい」



「すみません、10時にアポをとっているセブンの松川ですが、商品管理課の行方さんお願いします」



「おはようございます、○U百貨店の磯部です…――」





 午前10時を過ぎた途端

 4人もいる受付に

 他社の営業が並びいっぱいになる。



 そして

 この時間が一番、私の苦手な

 時間帯だ。





「おっ、今日、高嶺ちゃんいるよラッキー」



「オレ氷室さんの所並ぼう♪」



「今日も氷の華は美しいね」





 あからさまに並ぶ列と

 ヒソヒソと交わされる

 他社の営業さん達の噂話に



 いつも気持ちが重くなる。



 けれど

 そんなそぶりを一切見せず

 淡々と私は受付業務を続ける。



 こっそりと渡される

 名刺に書かれた携帯番号とメルアドを

 ニッコリと受け取り

 一切連絡をしない。



 だから

 ついたあだ名が氷の華

 決してその辺の男にはなびかない

 と言う噂? らしい……。



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