恋する24時

「千川っ!?」





 ドアに手をかけた瞬間

 先輩に腕を掴まれて

 ビクッと、してしまった。



 もうヤだ

 これ以上何も聴かないで?



 自分でもわからない感情が

 どんどんあふれて



 止まらなくなる。





「お前、急にどうしたんだ?」



「……っ」





 胸が、苦しい

 自分でもワケがわからない。



 振り向いて

 印南先輩を見上げる。





「!?」





 彼は、アタシの涙に驚いたけれど

 掴んだ手を離してはくれなかった。





 涙が止まらない

 なんで泣いているの分からない

 胸の奥が苦しい。



 こんな自分を

 先輩に見せたくなかったのに。





「……っ、…っく」





 手を離して?

 これ以上一緒にいたら……。





「千川? 悪かった、泣くほど聴かれるのがイヤだったのか?」





 アタシは、うつむいて

 何度も頭を横に振った。



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