俺のシンデレラになってくれ!
「あ、昨日は挨拶もできずにすみませんでした」
「うわー!礼儀正しくて篤とは正反対!あたし、長女の咲です。よろしく」
「正反対ってなんだよ!」
「その子にしっかり面倒見てもらえばあんたのバカも緩和されるんじゃない?嫌われないように気をつけなさいよー?」
綺麗に笑いながらそう言うと、咲さんはドアに手をかけた。
そのまま部屋を出ていこうとする咲さんに向かって、篤が不思議そうに声をかける。
「何か用があったんじゃないの?こんな時間に家にいるのも珍しいし」
「あぁ。今日、近くの専門学校で臨時の講師やってて、店に帰る前にその荷物を置きに来たの。篤いるなら片付けでも頼もうと思ってたんだけど……ごゆっくりどうぞー」
何をだ。
突っ込む暇もないような絶妙なタイミングでドアを閉めると、咲さんはそのまま部屋を離れていった。
「何がごゆっくりだ」
遠ざかる足音に合わせるみたいに、静かになった部屋に篤の声が響く。
「咲さんって、紬さんよりもパワフルな感じ?」
「そうかも。昨日の担当が紬でよかったな。咲だったら、あることないこと勝手に質問攻めにされて盛り上がられて、その上言いふらされてたと思う」
「あー……、それは大変」
「いつも仕掛けるのは咲なんだ。紬もノリのいいこと好きな性格だから、それに乗っかってさ。
光は傍からそういうの見てて止めないし。葉は葉で、単独でさらに突拍子もないこと仕掛けてくる」