テノヒラノネツ


「普通、女性はどういったクリスマスプレゼントが嬉しいものなんだろうか?」



千華は苦笑する。
当たり前なのだ。
彼に恋人がいても可笑しくない。
掌に伝わる熱の懐かしさが、現実の距離を目隠しする。

「……古賀君の彼女?」

彼はやはり、昔の祐樹君ではなくて、古賀君なのだ。
千華は彼の名前を呼ぶまいと、心の中で決めた。

「いや……付き合ってない……付き合って欲しいとは思ってるんだ」

「そうかあ……」

「どういったものがいい?」
「うーん……その人によるけど、古賀君が心をこめて送れば、なんでも嬉しいんじゃないの?」
「千華が欲しいものは?」
「酒」
「?」
「うーんと美味しいワイン。古賀君が彼女とうまくいったら、そのワインで祝杯する」
「……」
「今のところはそんなもんかな……何あきれてるのよ、だから人によるって言ったじゃない。私の意見はそんなに参考にならないの……あ――もうそんな顔しないでよ。わかったわよ。一般的には、服とか、バッグとか、貴金属とか、クリスマス限定コスメとか……そういうものに心惹かれるんじゃない?」
「そうか」
「どんな人なの? って訊いていい?」
「いや……そうだな……鈍感なヤツだ」
「はい?」
「俺も恋愛には鈍感とか云われるけれど、俺よりも鈍いんだ」
「……そうかあ、苦労するね」
「ああ」
「じゃあ、手を放して」
「……」
「ここでタクシー拾って帰るよ」
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