テノヒラノネツ

(……にわかクリスチャンって笑われてもいい……神様……ありがとうございます……)

2人はずっと帰宅まで手を繋いで歩いた。
遠い記憶が 千華の中で思い出されて、懐かしさと嬉しさだけに浸れた。
彼から伝わる掌の熱で、寂しさと切なさが、全部綺麗に溶かされ消えていく……。
「祐樹君は、何が欲しい?」
帰りの電車の中で、彼の腕によりかかり千華は尋ねた。
「?」
「クリスマスプレゼントだよ」
「いいのか、高くつくぞ」
「……いいよ」
「じゃあ、千華の時間を」
「?」
「クリスマスイブとクリスマス。千華の時間を、俺にくれないか?」
千華は繋いだ掌――――絡めた指先に力を入れる。信じられない思いで、手を握り返す。
どんなに心細くて不安に襲われても、繋ぐ手と手が、この伝わる熱があれば。
自分たちは大丈夫だと、あの幼い頃のように、千華は思い始めていた……。

千華は返事を返した。今日買ってもらったワインをその時あけようと、彼にそう云うと、彼は彼女の髪にキスを落す。
人前で、こういうことをする人だとは思わなかったと呟くと、彼は幾分……悪戯めいた表情で千華の顔を覗き込み、今度はその唇にキスを落した。




てのひらの熱と―――――同じぐらい、熱いキスを―――――……。



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