あめ玉ふたつとキャラメルひとつ
驚いたのは次の日の朝七時過ぎだった。
登校時刻は八時三十分までだが、私は毎朝七時には部屋に着くように登校していた。
運動部の朝の練習と同じくらいの早さで、野球部のランニングの掛け声を空で言える程だ。

黒板の左下に昨日と同じ、実に綺麗な筆跡で文字が書いてあった。
「お化けさん、いつも何を聴いてるの?」
青色のチョークで、昨日と似通った文が書かれていた。
「早起きなんだね。」
無意識に独り言を言っていた。たかがいたずらのためにこんなに朝早くここへ来ることも無いだろうから、運動部の生徒だろう。そう思って、窓からグラウンドを眺めた。
私はこのいたずら書きの人物に、すでに少し親しみを覚えていた。何よりも、字がとても綺麗だった。女の子だろうかと思ったが、男の子のほうが幼稚だとよく聞くのでその推理は外れだろう。
窓からグラウンドを見下ろすと、野球部が相変わらずランニングをしている。

暫く彼らを眺めた後、私は黒板に向かった。
青色の字を綺麗に消し、その上から
「多分、あなたの知らない曲。」と書いた。
赤いチョークで書いた私の字は、青色より少し目立った。
朝は時間が早く過ぎてしまう。きっと教室へ行く時間に迫りつつあるという、私の意識のせいだろう。だんだんと人の声が大きくなり、この部屋と繋がった廊下から聞こえる足音が増える。

今日は晴れているが、昨日より少し寒い。私は上着のポケットに手を入れて、教室へ歩いた。ボケットが伸びるしみっともないと、毎朝のように母に言われるポーズだ。



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