ブラウン管の中の彼女



「絶対拒んでやる!!」


鼻息荒くそう言うとママははあっと大きなため息をついた。


「あのね、実早。今までは“振り”でよかったけど今回はだめなの。駅前の看板あるでしょ?あそこにこのリップのポスターを貼る予定なの。CMは誤魔化せたとしても顔のアップのポスターは誤魔化せないわ」


完全に逃げ道を塞がれた。


「だからって…」


やだ泣きそう…。


「実早がやりたくないならそれでもいいわ。勝手になさい。その代わり祐くんと別れてもらいますから」


よく考えなさいと言ってママは事務所に戻っていった。


ママの…


「バ―――――カッ!!」


横暴!!最低っ!!


実早はその辺に置いてあった縫いぐるみをドアに向かって投げつけた。


久し振りの休暇は完全にぶち壊しだ。



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