ブラウン管の中の彼女




「はあ…」


僕にとって今日ほど憂鬱な日はなかった。


「実香さん…ほんっとうに僕でいいんですか…?」


「あら!!祐ちゃんが嫌なら別に私はいいのよ~?」


実香さんはニヤリと微笑んで左にハンドルを切った。


僕が嫌がらないと知っている実香さんはそのまま車を走らせる。


次の角を右に回り、10分ほど直進すると本日の撮影現場だ。


僕は背もたれに体を預け助手席の窓から流れる景色に目をやった


実早ちゃんには仕事を優先して欲しいって言ったけどそんなのは嘘だ。


実早ちゃんに触れられるのは自分だけであって欲しい――…。


どこかでそう思ってる。


心の底から応援してあげられない自分に腹が立つ。


なんで僕はこんなに卑しい人間なんだろうか…?


傍にいられて幸せなはずなのに…。



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