ブラウン管の中の彼女


その日、学校中に衝撃が走った。


「福永実早です!!皆さん仲良くしてくださいね」


最後にニコッと微笑むとクラスの男子はおろか女子でさえもその魅力の虜になっていた。


芸能人の福永実早が何のとりえもない普通の都立高校に編入というニュースはこの学校の生徒だけではなく近隣の高校にも広がっていた。


恒例の朝のホームルームは混乱を極めていた。


まあ唯一この事態を知っていた僕はというと、顔を伏せなるべく実早ちゃんの方を見ないようにしていた。


なんでよりにもよって同じクラスなんだ!?


こういうところではいやに機転が利く実早ちゃんのことだ。


もしかしたら先生たちを手玉にとって無理やり同じクラスに転入できるように取り計らったのかもしれない…。


「何かわからないことがあったらクラス委員の間宮に聞くように」


先生は最後に要らない一言を添えて実早ちゃんに席に座るよう指示した。


席に移動する最中、一瞬だけ眼があった。


実早ちゃんは口パクで“大丈夫”と言ってきた。


本当に大丈夫なんだろうか…?


これからの学校生活を思うと胃が小さくなる…。


僕は今朝の会話を思い返してみた―…。



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