恋する手のひら
二人が楽しそうに話し込んでる脇で、女の子が私の顔を見て会釈する。

ふわっとした笑顔がかわいい。
武内先輩の彼女かな。
男の人が守ってあげたいタイプってきっとあんな感じなんだろうな。

そんなことを思っているうちに、タケルたちは話し終えたようだった。

「じゃあ、スタンドで応援してるから。
頑張れよ」

武内先輩はそれだけ言うと、彼女と連れ立って去って行った。

「ねぇ今の、先輩の彼女かな」

私がタケルの脇をつついて聞くと、彼はニヤッと笑う。

そして私の耳元に顔を近づけ、ここだけの話だけど、と前置きして囁く。

「今のは佐々ちゃんの彼女」

「えっ！嘘っ！！」

私は思わず振り返る。
だけど武内先輩たちの姿はもう見えなかった。

さっきの子がうちの高校で絶大な人気を誇る佐々本先生の彼女だなんて驚いた。
だって私たちと同じくらいの歳にしか見えなかったんだもん。

「しかも教え子。
俺らの一コ上」

これも内緒だけど、とタケルが付け足す。

重要機密事項に違いないはずなのに、隠す気が全く感じられないのがやっぱりタケルだわ。
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