初恋の実らせ方
「啓吾くんは昔から格好良かったよね。
今もだけど」


広くなった啓吾の背中に向かってつぶやく。


彩は、幼い頃から優しくて頼り甲斐のある啓吾が大好きだった。
だけど思いを伝えたことはない。
どうせ妹にしか見てもらえてないと分かってるから。


「そりゃどうも」


「深い意味じゃ、ないんだけど…」


気付けば高校は目前。
交差点を曲がれば校門が見えてくる。
生徒の交通量がいきなり増えるのもこの辺りからだ。


「啓吾くん、ここでいいよ!」


彩は慌てて啓吾のセーターを引っ張る。


これ以上啓吾の後ろにくっついていると、また責められるかもしれないから。
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