初恋の実らせ方
英知の力は強くて押し退けることができない。


間近に迫った顔からはいつの間にか笑いが消えているし、キスでもされかねない距離になってる。


「啓吾くん…」


彩は無意識のうちにつぶやいていた。


「何で今、兄貴の名前を呼ぶんだよ…」


一緒にいるのは俺なのに、という言葉を飲み込みながら、英知は膨れっ面で彩の腕を離した。


「英知が変なことしようとするから…」


「変じゃねぇだろ」


好きな子に触れたいのは当然だ、と英知は思う。


「兄貴だってするね」


その言葉に彩は黙ってられない。


「嘘!
啓吾くんはこんなことしない!」


「するね」


即答する英知にいちいち腹が立つ。


彩はしないもん、と言ってべーっと舌を出す。


「賭けるか?
俺が勝ったら今の続きするからな」


「英知こそ、負けたら私の言うこと聞きなさいよ」


二人は睨み合った後、同時にぷいっと顔を背けた。
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