初恋の実らせ方
「何するの…!」


英知の感覚が残る唇を必死に手で擦りながら、彩は英知を睨んだ。


「何って…。
彩がいいって言ったから―――」


「そんなの冗談に決まってるでしょ!」


まさか本当にキスされるなんて思いもしなかった。


だけど英知にとっては冗談なんかじゃなかった。
英知は真剣に彩にキスしたかったし、了解も得た。


「それに、彩だって以外と積極的―――」


そこまで言ったとき、英知は彩とのキスを思い出して赤面する。


夢にまで見たキスは、想像以上だった。
英知があれだけ気持ち良かったのだから、彩だって嫌な気はしそうもないのに、彩が泣きそうになるものだから英知は内心複雑だ。


「ひどいよ…」


「そんなこと言ったって、しちゃったもんは仕方ねぇだろ。
俺は悪くないからな」


英知の主張は正論だったけれど、彩には啓吾への罪悪感が付きまとう。


「ひどいよ英知…。
何でこんなことするの…?」


彩は英知を両手でポカポカ叩く。


「バカ!
英知なんて嫌い」


英知はムッとしてその手を掴んだ。
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