初恋の実らせ方
高校に入学したての頃、啓吾の人気を知らずに一緒に登下校をしてたのを、彼の取り巻きに咎められたことがあった。


それ以来登校時間をずらすために電車で通ってることを、啓吾はきっと知らない。


「兄貴と一緒は嫌だって」


返答に迷う彩を見て、英知が横から口を挟む。


「電車だと遅刻ギリギリ。
チャリなら余裕」


啓吾がそう言って自転車に跨がったのを見て、彩は英知を押し退けた。


「啓吾くん、やっぱり乗せて」


英知を無視して彩は啓吾の背中にしがみつく。


「ちょっと待っ…」


英知が文句を言う間もなく、二人は風のように去ってしまった。


「何だよ、彩のやつ…」


一人取り残された英知は、ふて腐れて塀を蹴った。
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